2017.10 of rsio

Column コラム

2017-10-11

上石神井特別養護老人ホームは、内藤事務所時代の先輩である沼田恭子さんから声を掛けていただき、設計段階から関わらせていただきました。それまで老人福祉施設とは、ほとんど関わりを持ったことがなかったので、「特別養護老人ホーム」とはどのようなところなのかを理解するところからのスタートでした。既存施設の見学会や高齢者ケアの現状や問題点など、いろいろと知っていく中で、設計者の立場としては、「特別養護老人ホーム」は「施設の設計」ではなく「住まいの設計」であるということを認識することが、特に設備設計も含めて、重要なポイントだったかと思います。「施設」というと、自分ではない誰か、第三者の為の設計になりがちですが、「住まい」ということで、日常生活としての身近な空間を意識して全体から細部まで考える。しかし、完全な「住まい」というとそうではなくて、入居者の人数とほぼ同じ人数のスタッフが出入りする場所であり、入居者にとっては「住まい」でも、スタッフにとっては「働く場所」であるので、スタッフが働きやすい環境であるということも、「住まい」としての居心地のよさと同じくらい考慮すべき重要なポイントでした。設備的には、臭いなどの問題から換気は必要だけど、ある一定の湿度環境も必要なので、どの程度の換気量に設定するのが妥当なのか。セキュリティ的には、外部からの侵入は防ぎたいけど、入居者の徘徊などを考慮すると内側からの管理が必要だったり。つまり「特別養護老人ホーム」は、「こうでなければならない」という分かりやすいルールで括ることがとても難しい施設であるということがいえるのではないかと思います。箱が出来てしまえば、それなりに使ってもらえるわけで、あまり真面目に考えすぎず、「未完結型にすること」を意識しながら進めていくことも、とても重要なポイントだったと感じています。

「建築設計テキスト高齢者施設」に上石神井特別養護老人ホームが掲載されたということで、先月、彰国社の佐野知世子さんから郵送いただきました。改めて高齢者施設の設計事例など内容を拝見し、一冊の設計資料としてまとめあげられたご尽力に心より感謝申し上げます。高齢化社会が進む中、今後も多くの施設が出来てくるだろうと思いますが、いい施設設計の手助けになるものとなるものだろうと思います。

建築設計テキスト 高齢者施設
建築設計テキスト編集委員会編  山田あすか・古賀誉章 著
彰国社 


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